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のりくらてーけっとー by S.H.

 毎年夏休みにはテニス仲間と自転車を担いだり押したりして雲取山(東京都で 一番高い山、皇太子様が雅子様と登った山、2018m)や大菩薩峠に登っている。 今年は趣向をかえて上高地、乗鞍に出かける事になった。夜行バスで行き、上高 地は歩き、乗鞍は自転車で登る計画。自転車は前もって宿泊する乗鞍高原のペン ションに宅急便で送った。<関連アルバムを見る>

 診療が終わってすぐリュックを担ぎ、新宿駅西口の飲み放題食べ放題のレスト ランに急ぐ。もう既に他のメンバーは飲み食べ放題していた。2980円ぽっきりの 割には生ビール2種類、ワイン6種類、日本酒4種類、焼酎8種類とアルコール類は 豊富だ。料理は余りたいしたことはなく、ローストビーフなどは元々ないし、鮪 の兜焼きは既に残骸と化していた。遅れを取り戻すべくせっせと料理をつまみ、 黒ビールを飲む。とんでもない事にそのレストランは21:30で営業終了なの で、仕方なく場所を都庁前に移して飲み直し。しばらくするとどこからともなく 警備員が現れ「ここで宴会しないでくださいよー」と注意を受けた。やはりまず かったか。それほど騒いでもいないのに飛んできたのは、どこかにモニターがあ るらしい。つまらんところに税金が使われているな。などと反省しながら撤収し て近くの公衆便所で小用を足して(なにせ我々の乗る高速バスにはトイレがつい ていないらしい)バスの集合場所に向かう。23:10発の夜行バスの中ではさ すがに宴会はできないので軽く日本酒をのんで寝る。

 翌朝は6時頃に大正池着。朝からざざ降りの雨だ。傘をさしてとっとと歩き、 河童橋へ。かなり人が多い。サルもいっぱいいる。上高地は歩きにしておいてよ かった。こんなとこ自転車で来なくて本当によかった。あとは例のごとく明神池 から徳沢へ行き、対岸をバスターミナルまで戻る。そこからバスで乗鞍高原の南 にあるペンションへ。次の日はいよいよ乗鞍畳平まで自転車だ。

 いつも雲取山、大菩薩峠のときには民宿で朝食時にビールを飲み、ごはんも3杯ぐらいおかわりをしてしっかりcarbon storageし、弁当もおにぎり3ヶは持っ て登る。今回はペンションなので朝はトーストだった。朝食時にビールを注文し たが、オーナーがうちでは朝食時にはビールは出しません、乗鞍に自転車で登る んだったらやめとけと言う。仕方なくビールはあきらめて食べ始める。そのうち ペンションのオーナーのお話が始まった。食べながら聞いて下さい、今日上高地 に行く人は河童橋は通り過ぎて下さい、河童橋は「上高地」ではなく「観光地」 です、一番上高地らしい所は大正池からバスターミナルの間です、バスターミナ ルには11:30には戻って下さい、それを過ぎるとバスの待ち時間が2時間以 上になります、乗鞍に行く人は.......と長口上が続く。で結局トーストのおか わりも紅茶のおかわりもできなかった。しかも食中毒を出したら大変な事になる ので、うちでは弁当は作りませんだと......。

 ペンションから乗鞍高原の駐車場まで6kmを40分かかって登った。この駐車場 から畳平までは22km、標高差約1400mを速い人はロードレーサーで1時間ぐらい で登るらしい。まあ我々のようにマウンテンバイクでも2時間30分もあれば登 れるだろう。それに畳平にはレストランもあるし.....と考え、食べ物はもたず水分のみ持って出発した。ひたすらペダルをこぎ、いくつもカーブを曲がり、ど こまで行ってもえんえんと登り坂である。かなりしんどい思いをして雪渓のとこ ろで一休みしていると、ロードレーサーに乗ったお姉さんがにこっとして「ここ からがきついんですよねー」と言いながら通り過ぎた。なにぃここからがだあ? 今の言葉聞きたくなかった、今まででも十分きつかったのに.....。気を取り直 して又ペダルをこぐ。こいでもこいでも登り坂。森林限界で、這い松が見えだす 頃に雨が降り出した。雨具を着ていると向こうからランニングしてくるおばさん に会った。乗鞍スカイラインを登ってきたそうだ。畳平はもうすぐだから頑張っ てねと言ってスタスタ行ってしまった。世の中にはとんでもない人がいるもん だ。しかし、おばさんにもうすぐだからねと言われても全然もうすぐではなかっ た。なおも登り坂は続く。嘘つき。そのうち気分が悪くなってきた。ああ寒い、 手がしびれる、むかむかする、不穏だ.....この症状は低血糖だ!と正しい診断 がついても食べ物がないのでどうしょうもない。水筒のお茶を飲んでまぎらわす (お茶を濁す?)が、やはり空気も薄いので余計しんどい。うだうだしてても しょうがないのでとにかく休み休みペダルをこぎ、ペダルをこぐ度にカツ丼カツ 丼と気合いをいれ、必死のおもいでやっと畳平に到着した。なんと3時間40分 もかかった。展望レストランに急ぎ、まずはよもぎ団子、みたらし団子、五平餅 とビールで一息ついた。その後1時間ほどして到着した仲間もやはり低血糖に なっており、一緒にカツ丼を食べる。我が生涯で一番おいしいカツ丼だった。

 山をなめたらあかん。ペンションなんかきらいだ。おばさんもきらいだ。

2005 夏

 

 
 
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