シンゾーさんからのおたより-その27

   
2006.9

 

以前、台湾はゆるいルールで成り立っていると書きました。このアバウトさが日本の社会通念からするとかなり違和感のあるところです。一応始業は8時半になっているのですが、厳しく言わないと大抵遅れてきます。遅れた上に、それからやおら食事をする。どうも学校でもそうらしいから、これを直させようとすると大変です。日本統治時代はこうではなかったとかテニスの洪先生(78歳)が言っていましたので、国民党とともに大陸から来た外省人の影響なのでしょうか。どっちもどっちだと思うんですが、台湾人に言わせると大陸はもっとひどい、と。

てんぷら料理海老天の日本人シェフの佐々木さんが言っていました。最初は挨拶の仕方、料理の出し方から始めるのですが、厳しく言うとすぐにやめていく。時々ぼくはその店にいくのですが、佐々木さんがいないときは、とにかくてんぷらは揚げたらすぐもってこい、と言わないとダメ。

日本も最近は変わってきていますが、きちっときめなくても、ある程度ちゃんとした品質のいいものができます。でも、ここではそうはいきません。電気炊飯器を買ったら1回目でダメになったとか、DVDデッキも一年で買い直したような例をよく聞きます。でもこの国ではこれで世の中のすべてが不都合なく回っているところが不思議です。日本であのような車の運転をしたら、必ず事故になります。が、台湾では何でもOKだから、お互い注意しながら運転している。それゆえ大きな事故はあまり起こらない。

仕事があろうがなかろうが残業はやらない。労働法もそういう風に出来ている。2時間までの残業代は通常時間の33%増、2時間以上4時間までは66%増、それ以上は100%増。定時で帰るからアフターファイブに居酒屋で上司を肴にして日ごろのうさを晴らす、なんてこたーありません。帰ってから家族一緒に屋台で食事をする。質素だが、人間らしい生活をしている。翻って台湾新幹線で働いている日本人、長時間の残業はザラ、その上日曜日も働いているのがいる。仕事が山ほどあり、また単身赴任ですることがないというのが理由だが。事務所にはドイツ人も働いているが、こんなこたー絶対にありませんぞ。皆さんも一緒に考えてもらいたい。果たして、小金持ち日本人と台湾人とどちらが本当に幸せか。

最近の毎日新聞の報道でこんなのが載った。世界の幸福度ランキングで日本は178カ国で90番目。英レスター大の研究者が経済や健康面といった基礎データと各国民の意識などをもとに分析した結果である。ベスト3はデンマーク、スイス、オーストリア。米国は23位、中国82位、ロシア167位。筑波大学の宗像恒次教授は「日本人の5割はきまじめで完璧を目指す執着気質で、また7割が不安を感じると悲観的な思い込みに走る妄想気質だから」と分析している。ちなみに自信家に見える石原慎太郎・都知事も「会見などで急に批判的な質問をされると、声を荒げて怒り出すなど執着・妄想気質の典型」だそうだ。

あまりかりかりせず、少なくともわれわれの世代は台湾人のようにブロードバンドでいきましょうや。ワークシェアとよく言われるが、制度がついていっていません。ドイツのように年間労働時間を1600時間に減らし、派遣社員ではなく、正社員で雇うようにルールを変えるんですね。ゆとりのある生活ができないと少子化は止まりません。ソニーが開発したリチウム電池の発火事故、日立のタービンブレードの破損事故、いずれも技術的には新しい要素はないということです。いままで出来たことがだんだん日本の製造現場で出来なくなりつつあります。もとはといえば、コスト面だけから正社員を簡単に派遣社員に変え、その結果日本人の美徳であった忠誠心が消え、社内で技術の伝承や品質の確保ができなくなったのと違いますか。これが続くとアメリカのように製造業は成り立たなくなります。

この拙文を読んでいただいている立川在住の高橋さんから便りがきた。高橋さんは、その昔つくば万博でトマトの“木”を見て“光合成”にいたく感激。会社を定年退職後、当初聴講生でも思ったが一念発起。正規の入試で東京農工大に見事合格。そして親子ほども違う他の学生と一緒に机を並べて勉強中です。最近は修士課程へ進学されたとか。元は電気技術屋さん。ただいま青春の真最中でっせ。

元高島屋友の会社長で、現在は社会教育家、日本笑い学界会長の,江見昭夫(昭和8年生まれ)さんの「笑いとPPK(ピンピンコロリ)人生」と言う講演を聞きました。彼はピンピンコロリを目的にしており、そのためには、問題を持っても悩まない事、毎日感謝の心を養う事、毎日感動を覚える努力をする事、悲しいときにこそ大笑いできる事、常に過去ではなく将来を目標にする事などを話していました。88歳になったら自転車で世界1周を行なう積りだそうです。少し小太りですが、大変元気で、病気はしないそうです。今は、毎日立川と三鷹の間を玉川上水に沿って自転車でサイクリングし、人や、子供や、色々な動物植物に出会って、感動し、感謝の心を養うと共に、悩む人のカウンセリングや講演で頑張っているようです。死ぬまで、元気に働いて、金を得る事が素晴らしいと考えているようです。「一怒一老、一笑一若」だそうで、怒ると年取り、笑うと若返るといっています。

だんだん台湾当局も新幹線の開業がなかなか難しいということが分ってきたようだ。10月31日には開業と言っていた台湾高鉄もトーンダウンして来年にずれるとかの話もでてきました。いずれにしても、高速鉄道を時刻表通り安全に運転を続けるということは簡単なことではありません。このへんが台湾人にはわかっとらん。製造業がすくない台湾ではエンジニアの数が乏しい上に、裏方の技術者よりも銀行員の方がはるかに社会的地位が上なんですよ。現世ご利益を考える道教と相俟って。

中島さんには新鮮味はないかもしれませんが、野性味あふれるタイワンランチョウを送ります。烏の仲間。


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2006年9月
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 2006.9(c)Shinzo

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