Dubai report from Sinzo-1

2008.8 

 皆様、残暑お見舞い申し上げます。

 一年前台湾から帰国し、しばらく休養しておりましたが、今度はドバイからホットな情報をお伝えすることになりました。
 20数年前まで長らく中東諸国を渡り歩いて仕事をやったぼくは、もう二度と中東には来ないと心に決めていました。だが、台湾新幹線の腐れ縁で、しかもちょっとだけよ、という甘い誘いと、今世界の金融センターを目指して急速な発展をしているドバイの姿をくたばる前にこの目で見てみたいという思いが重なってまた来てしまった。
 8月1日、日本を発って香港へ、そしてその日の晩ドバイへ着きました。香港からは客層が違いますね。フィリピンからの出稼ぎ人がいっぱい。日本でも外国人は指紋をとられますから、アラブではことのほかセキューリティが厳しいのではと覚悟しておりましたが、意外にもパスポートを見せるだけの簡単なもの。入国のための申告書も書く必要がありません。不思議なことに街ではアルコールは売っていないのに、空港内にはリッカーショップがあるんです。こういう貴重な情報は来る前に流してくれないと後の祭りですわい。四つ星以上のホテルならアルコールを出してくれますが、ビール小瓶一本で22ディラハム(約750円)とられます。セブンアップもタマにはいいもんですよ。
 この日は運悪く、金曜日。翌日からすぐ仕事です。夜でも35度を割らないので日中は熱風が吹いています。現場で働いている人は大変ですよ。街ではタクシーが簡単にはつかまらないので、近くは歩くしかありません。
 ドバイはUAE、アラブ首長国連邦という国家を形成している七つの首長国のうちの一つです。UAEの首都はアブダビ、ドバイはUAEの最大の都市です。ここにはもう昔の面影はありません。800mを超える超高層ビルのベルジュドバイやその他の近代的な建物が目白押しに建設されています。大勢の外国人が働いています。ドバイの人口130〜140万人のうち、アラブ人は20%弱。あとはインド人、フィリピン人、ヨーロッパ人。ここではアラビア語は一応公用語になっていますが、働いているのはすべて外国人だから英語がメジャーでアラビア語はマイナー。他のアラブ諸国では朝早くからコーランがスピーカーから流れますがここではこれもありません。ミミズが這ったような文字と黒いベールを纏った女性が目にはいらなければ、アラブにいることを感じさせません。すでにここは中東であって中東ではありません。
 ドバイでは石油の生産がもう頭うちであと20年もすると資源が枯渇するといわれています。そこでだ。発想が凄いんです。バブルではないかとの懸念もなんのその。ラスベガスを見習ったのか、何もない土漠の地に世界中の金持ちを引きつける仕組みを作り上げようとしています。計画では2010年には旅行者1500万人を見込んでいるとか。Dubai Mallも建設中ですが、これは広さでは世界一。ナ、ナント市内から西方25kmのブルジュアルアラブにはスキー場もある。
 このドバイからはるか東方を見たとき、日本は世界のローカルになったような感じがしますね。国は借金漬けだから、年金も満足に出ない。さらに油が高騰して農業も漁業もだめになりつつある。もう油は燃料として消費してはいけませんよ。金属はリサイクル可能ですが、油は燃やすとなくなるんです。そして、なくなる前に価格がどんどん上がっていくんです。そんなの当たり前でしょ。原油の価格上昇は投機のせいだとする考えは長期的には間違っています。石油にたよっていた世の中がたちゆかなくなって代替エネルギーに代わっていく過渡期、一種のパラダイムシフトととらえるべきでしょうね。逆転の発想で、石油産業がないことがかえってその他のエネルギーに転換しやすい、とぼくは踏んでいます。日本海溝にはメタンハイドレートとマンガン団塊が眠っていますから、ひょっとすると日本は超資源国になるかも。それでも地方が、地方がという向きには、無駄な道路を作るよりも、フリーポートやカジノを作ったらどんなもんでしょうかねぇ。
 ぼくの仕事はドバイメトロプロジェクトのTraining Managerです。ドバイメトロはアラビア湾岸に沿って走る52.1kmのRed Line(Phase1)と市内をU字形に走る23.8kmのGreen Line(Phase2)とがあり、それぞれ2009年9月、2010年3月の完成になっています。次は早くもBlue Line(47km)が2011年、Purple Line(49km)が2012年の計画となっています。メトロは地下鉄という意味のほか都市型電車と辞書に載っています。ドバイのRed LineはDubai Creek(入り江)を横切る5kmほどが地下鉄ですが、その他は高架橋の上を走るようになっています。ルートの詳細はこちらをどうぞ。
http://www.urbanrail.net/as/dub/dubai.htm
 最高走行速度は90km/ですが、すべて無人運転で制御するように設計されており、高速鉄道と並んでもう一つのハイテク鉄道と言えます。土木工事はyapi merkezi(トルコ)が取りまとめで鹿島、大林が入っています。また、鉄道システムは三菱重工のとりまとめで、車両(近畿車両)、レール(新日鉄、JFE)と電力システム(明電舎)が日本から供給となっています。通信・信号、運転制御システムはAlcatel-Lucent(仏)の担当です。総工費約4,200億円。
 このRed & Blue Linesとは別にPalm Monorailというのがあります。よく映像でみかけるヤシの形をした島(パームジュメイラ)とこのRed Line間の海上1kmを含む全長5.45kmのもので、日立グループが建設にあたっています。予定では今年10月より試験を開始し、2009年4月の開業となっています。
 パームジュメイラより大型で同じような形をした人工島、パームジュベールアリとパームデイラが、そして世界地図を模したThe Worldも建設中です。区画ごとに分譲されますが、金持ちの皆さん、なんなら早めの予約をとっておきましょうかぁ。普通ならこんな壮大な計画はバブルそのものだと思われるのですが、天然資源を持っている国にはバブルはありえないのか。
 金曜日の朝早く一時間ほど散歩していたら、台湾で見かけたあのヤツガシラがいました。ナツメヤシの実(デーツ)を食べにきているんですね。そして驚いたことにこんな熱いところには野鳥はいないはずと思っていましたが、調べてみるとUAEには400種もの野鳥がいることがわかった。そしてドバイは隠れた野鳥観察地というではありませんか。もう興奮の極致ですよ、これは。とりあえずチャリを買って足を確保しないと。そのうちドバイのバードギャラリーに登場します。乞う、ご期待。

 

Red Line 高架橋上で中心街を走る
建設中の駅
ブルジュドバイ 最終の建設高さは世界一を破られないよう非公開だが、多分818m、165F
Emirates Tower 354m
市内の様子
住宅地

 
 再見
2008年8月

P.S. TBKの皆様、壮行会をやっていただきありがとうございました。
最近台湾を訪れた新幹線仲間のFさんの報告では、分岐器のスイッチレールの不転換がまだ起こっているようで、先ごろは1時間ほどの遅れが生じ、払い戻しを行ったそうです。

(C) 2008 Shinzo

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