Dubai report from Sinzo-3

2008.9 

サラム・アレイコム(こんにちは)

 日本はさわやかな秋風が吹いている頃と思いますが、こちらはまだ日本で言えば真夏です。それでも、8月の熱さはもう峠を越えました。
 ドバイメトロの完成目標は999(2009年9月9日)となっていますが、土木工事や通信の設計・工事が遅れており、果たして計画通りにいくかどうか。9月20日、シェイク・マホメッド・ビン・ラシッド・アル・マクトゥーム閣下(シェイクは首長の意)がジュベール・アリ〜イブンバツータ間、11kmの試験走行に試乗。大層ご満悦であったと。

新聞報道(9月21日付けBusiness 24/7 の報道)(前列中央がシェイク・モハメッド閣下)
Gulf News

 思いもよらず、この年でぼくは英語のヒアリングレッスンに放りこまれました。会議に出るとぼくのほかは全部英語がネイティブかそれに近い人ばっかりですからね。こんな経験は数年前サンを離れて以来久し振りです。会話はテキストと違って冗長なところがありますから、ところどころ聞き取れない個所があっても、何とかしのいでおります。
 このサイトは読者との双方向のコミュニケーションで成り立っています。今度は台湾新幹線時代の同僚の大島さんより質問が来ました。ドバイの写真は超近代的な建物ばかりで生活感が伝わらない。台湾のようなB級グルメはないのか、と。大島さんはもともと電気屋ですが、今は持ち前の英語を生かしJAXA(宇宙航空研究開発機構)で働いている御仁。大島さんは自称グルメと言うのですが、ユーナイテッド航空の機内食が食べたくなると言うし、ヘビ料理から臭豆腐までこなすブロードバンド派。台湾である時、腹の調子が悪いと言って3人が早引けしたことがあった。何か変なものを食ったのではないかと問い質したところ、我輩がいないのを見計らって安い屋台で貝料理を食べたんだと。口をあけてない貝をむりやりこじ開けて食べちゃいかんですよ。
 ドバイでは大半がアジア人のため、エスニック料理が多い。この中でB級グルメをさがすのは難ですよ。食事に困ったら、ぼくはまずカレーか中華料理を探します。カレーならタイだろうが、インディアンだろうが結構食べられますから。
 地元のカフェテリアではシェロワマというサンドイッチ風のものがあります。グリルを縦において、チキンやマトンを焼く。焼けた表面をナイフで削り取り、野菜と一緒にクレープの生地のようなものに巻いただけという簡単なものです。唐辛子のピリッとした辛味がきいています。一本5ディラハム(1ディラハムは35円)。中華料理も日本料理も韓国焼肉も一応ありますが、残念ながら日本のように食材が豊富で食文化が進んでいるわけではない。こんなもんで辛抱するしかないのか、ぼくも聞きたい。台湾のように、タクシーでどこへでも簡単に行けて、温泉あり、ショウロンポー(小龍包)あり、種々の中華料理があるというわけにはいかんのです。

シェロワマ用のグリル
ベーカリー(ナン)

 不便なのは足がないこと。こちらではタクシーは走っているのですが、なかなか止まってくれません。その上、行き先が近いと乗車拒否される。一年前はそうではなかったというんですがね。そこで安いチャリを買いました。ところが、こちらの道は全部高速道路のようなつくりで、歩道は途中で切れるし、おまけに勾配がついていないバリアーだらけ。大きな交差点はイギリス式のラウンドアバウトになっていて、右折車は止まることなく走ってきます。歩行者用の信号はありますが、車が途切れる間を見計らってすばやく渡るしかありません。車をもてない貧乏人には決して優しくありません。
 ぼくの住んでいる所はRed LineとGreen Lineが交わるブルジュマンという駅になる所の近く。事務所は一つ隣のユニオンスクエアーで、ホテルからはドバイクリーク(入り江)を挟んで対岸にあります。事務所にはインド人が運転するバスに乗り、クリークの下のトンネルをくぐっていくのですが、運動不足の解消もあわせて帰りはウオーターバスと徒歩にしました。
 メトロを作っている道路・交通局(RTA)が直営するウオーターバスは冷房もきいて4ディラハム。一方、地元の船は1ディラハムと超割安。こちらはごらんのように出稼ぎ人がいっぱい。もし事故で沈没しても誰が乗っているかもわかりませんから、行方不明者約?名という中に入るリスクがありますね。

RTAのウオーターバスと後方は泥舟?、どちらもアブラといいます。

 生活感はどこにあるんや、ということでスークに行ってみました。中東特有のキンキラキンのゴールドスーク、香辛料専門のスパイシースーク、青物市場、フィッシュマーケットがありました。でも、働いているのも、まわりにいるのもアジア人が圧倒的に多いので、かつてのスークのイメージと何か違うんですね。チャイ(紅茶)や水たばこをアラブ人と一緒に味わった、かつてのスークには人間味がありました。

街中にて
ゴールドショップ
スパイシーショップ

 ドバイは昔から貿易で栄えた都市です。ドバイクリークの埠頭には貨物があふれています。夜になると多くのディナークルーズ船が出る。

クリーク埠頭
ディナークルーズ船 (ISO3200,  1/3秒, F11 +0.7)

 9月1日から29日間のラマダン(断食)が始まりました。イスラム教徒にとっては神聖な行事で、太陽が出てから沈むまで食べ物も水もたばこも口にしてはいけません。病人、妊婦、旅人は断食しなくてもよいが、後で同日間断食する。老人、幼児は断食を免除される。断食を破った人は埋め合せに、60日間断食をするか、または60人の人に食事・慈善を施せねばならない、というものです。熱いさなかだけに、この時期のラマダンは大変です。
 いきなりですが、あなたは神を信じますか。“アッラー アクバル、アシュハドアンナ ムハンマダンラスールッラー”(神は偉大なり、ムハンマドはアッラーの預言者であることを証言する)。毎日スピーカーから声高らかに流される音声です。日本人は単一民族で、その多くは仏教を信仰し、神はやおよろずの神です。イスラムから見ると、こんなのは神ではありません。神は唯一アッラーです。偶像は一切認めません。この排他性が極端になったのがタリバーンによるバーミヤン遺跡の破壊です。無神論者などはとんでもありません。牛や馬と同じ類になりますからご用心を。
 事務所には機械屋のエジプト人がひとりだけ働いています。ムスリムは昼食なしで働くのですが、退社は2時間早く帰ってよい、という特典つきです。ノンムスリムのわれわれも終日、水もコーヒーも飲めなくなりました。しかも、昼食は特定の場所でとるようにとのお達し。
 一緒に台湾で働いていたインド出身のKさんは、東大土木科卒で日本語もかなりうまい。その彼がいきまいておりました。「ムスリムは自分がメシを食べないから、ノンムスリムも食うな、というのはわがままだ。インドにもムスリムは2割いるが、こんなことはないぞ」要するに、イスラムでは宗教行事ががっちり日常生活に組み込まれて、法律もそういう風に出来上がっているということです。ラマダン中はホテル内でも朝、昼の食事は部屋に運ばせて食事をとるしかありません。バス乗り場でジュースを飲んでいたロシア人はチクられ、罰金1000ディラハムとられたと新聞報道。
 前回のナツメヤシの写真をみるとあざやかな芝生が目に入りますが、当然ながらこちらでは緑を維持するのは大変です。一本一本の木、芝生には自動散水装置がついており、毎朝晩、大量の水をやっています。この水は海水淡水化装置でつくったものですが、節水という言葉は聞きませんね。皆さんは便利さに慣れているから、水道の栓をあけると水が出るのは当たり前と思われるでしょうが、中東で水道が整備されている国は珍しい。天然のオアシスの湧き水は、良質なミネラルウオーターとして、ペットボトルに詰められ“Masafi”(健康という意味)というブランドとして海外にも輸出もされています。

 おまけです。女性にカメラを向けるのは、あまりよくないこととは知りつつ、望遠で横顔を拝借。

   
 再見
 2008年9月

(C) 2008 Shinzo

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