Dubai report from Sinzo-9

2009.3 

 サラム・アレイコム

  皆さんお元気でしょうかあ。
 イスラムの国には絵画も音楽も、娯楽というものもありません。唯一の芸術はモスクから聞こえてくるコーランだけです。独特の節回しと張りのある声で音楽のように朗々と響き渡る。その抑揚と、力強さとそしてそれを区切る静けさ。慣れると不思議なもので、ぼくのような不信心者でも毎日聞いていると聞く者を陶酔させる磁力がある。一日5回の祈りがある。モスクに入り切れない人が、どこからともなくやってきて路上に絨毯を敷き、祈る。金曜日の午後1時、ゴールドスークの近くにあるモスクの前の歩道で敬虔なイスラム教徒の祈る姿がありました。写真を撮るのは本当はよくないのですが、皆様には特別に望遠でお届けしましょう。

おいのり1
 
おいのり2


 バードウオッチングの師匠、古谷さんからエールが来ました。古谷さんはサウジに2年間も滞在したプロです。サウジにはアルコール類は全くありません。3月ともなると、だんだん熱さが戻ってきます。4月、5月は特有のサンドストーム。6月から8月は焼けつくような太陽。古谷さん同様、かつて中東の仕事を長らくやっていたぼくはサウジの大変さがよく分かります。古谷さんはたまらずドバイへ緊急避難したとか。ドバイの熱さはサウジと変わりませんが、酒も手に入るし、種々のイベントもあります。行動も自由ですので結構楽しんでおります。
 1月、アルアインでのエアーショー。2月、デニスチャンピオン大会。残念ながら、シャラポワもフェデラーもナダルも来なかったが、アフターファイブにビールを片手にプロの試合を観戦。3月、ラグビー・ワールドカップセブン(7人制で7分ハーフ)。初日、南アフリカ対日本は、後半日本が1トライを決め26対5。28日には競馬のワールドカップ。日本からも出馬すると聞き、これはぜひ見に行くべしと思ったが、入場料が1500ディラハム(約4万円)ではなー。競馬は金持ちの娯楽ですから、世界の景気が悪くなっても全く関係ないというこっちゃ。

サウジアラビア空軍
サウジアラビア空軍 <ISO400、1/1200秒、F8>
複葉機デモ飛行
ロシアのWar Bird Team
メインスタジアム
テニス大会メインスタジアム
テニス大会
ラグビー・ワールドカップセブン

 2か月に一回はフィリピン人、インド人、香港人の仕事仲間を集めて慰安のバスツアー を実施しております。先月はアブダビまで行きました。アブダビはアラブ首長国の首都です。インフラは整っており、落ち着いた街でしたね。世界最大のシェイク・ザイードモスクは観光地になっていますが、ムスリム以外は中へは入れません。

宮殿
宮殿のゲートにて
うしろは宮殿
後ろは宮殿
シェイク・ザイードモスク ムスリム(イスラム教徒)以外は入れません
モスク
 
モスク
 

 前回、全線の試運転の様子をお伝えしました。が、問題は駅舎です。何ヶ月もたつのに工事はあまり進んでいるようには見えません。どの駅も完成には程遠い状況。そこで999(2009年9月9日)の開業日には29のうちの18駅だけオープンする案が浮上。でも、どの駅を優先させるのか明言しないもんだから全滅という事態もありうる。遅れの原因の一つはあの丸みを持たせた構造設計にあるのではとぼくは勘ぐっています。

ジュベールアリ
一番工事が進んでいるジュベールアリ・インダストリアル

 運転・保守のトレーニングは。1月より開始し、約2割を終了したところです。相手はフィリピン、インド、タイから安い給料でかき集めてきた保守要員です。彼らはそれなりに教育は受けているようですが、にわか作りの組織で、それに残念ながら現場の作業経験が乏しい。観察していると機器の蓋をビスで取り付ける際、最初からドライバーを使って力で無理やりねじ込むもんだから、ネジ山をつぶしてしまった。これじゃ丸で子供じゃーないの。インドには階級制度があり、そういう作業は自分の仕事ではないと思っているのかも。

 ぼくの部下はインド人1名とフィリピン人2名。同僚は香港、シンガポール出身です。彼らは英語が日常語になっていますから、国際ビジネスには欠かせません。でも、インド人の発音にはひどいのがある。カール・パルキング(car parking)はいい方で、何回聞いてもアルティングというので、スペルを聞いて初めて分かった。earthing。客先にはフランス人がいるが、この発音もひどい。でもほかの人は皆ちゃんと分かっているから、こちらに問題があるということでしょうね。香港出身のレイモンド氏は幼稚園の頃から、英語の訓練を受けているのでネイティブに近い。彼は広東語が母国語だが、パソコンの漢字の入力方法を知らないという。で、どうするかというと、手書きで漢字を書き、それをスキャンしてメールに添付するんだと。この手の人間ばかりが集まった会議で、ややこしい話を早口でやられると、もう手におえません。
 こういう状況を想定したかどうかわかりませんが、最近日本でも小学校から英語を教えるという。でも、ちょっと待った。本当に英語を週1時間やったらうまくなりますか。それに一体誰が教えるんですか。言葉は意思疎通のツールですが、それ以上でもそれ以下でもありません。日本人が英語がへたなのは、教育というよりもほとんどの人は海外旅行くらいしか英語をしゃべる必要性がないからです。インドやフィリピンでは言語が20以上もあり、英語を使わないと国内でも意思疎通が出来ない。その上、出稼ぎに行くには英語が必須だからです。日本語でちゃんと書いたり、話したり出来ない人に英語でしゃべれと言っても無理なのでは。それよりも中学の英語の時間を増やした方が効果的だとぼくは思いますがね。小学校から英語教育をという経済界の主はひょっとして英語が苦手なのではと思ったりします。御手洗さん、本当のところはどうなんです。

マ・サラマ
2009年3月

(C) 2009 Shinzo

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