Middle Agers' Spirit in Hokkaido−その3
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7月4日(塩狩ー旭川ー美瑛ー美馬牛)同道:水上さん、西薮さん、渋谷さん
会社の同僚のYさんが旭川へ行ったらカムイコタンへ行けというもんだから、そ れがどこにあって何なのか調査せずにここまで来てしまった。今日はそのカムイ コタンだ。YHでどういうワケか英語の地図を渡される。場所は旭川から12号 線沿って石狩川を南に下った所にあることがわかった。カムイコタンという地名 から僕はかってにカムイ伝に出てくるような所か、あるいは昔いやひょっとする と今でもアイヌ人の集落があるのではないかとかってに想像した。神居古潭と書 く。

石狩川をはさんで両側から山が迫り、川幅が狭まって急流になる。そういう川の 景観が素晴らしい。アイヌとは関係がなくはない。アイヌ民族の伝説では、その 昔魔物が住む場所と恐れられていた。奇岩・怪石が多く、舟の難所だったためそ んな伝説が残ったようだ。ハイキングコースになっているが、昔は鉄道が通って いたからかなり観光客が来たのだろう。

その線路はすでに撤去されていておまけに舗装されている。絶好のサイクリング ロードなのだが、どういうわけか通行止めになっている。そんな立て札でやめる ような軟弱な我々ではありません。が、トンネルを抜けると出口が鉄格子で閉鎖 されている。でもよく見るとちゃんと人がひとりだけ通れるように親切に格子が 壊されている。何故に通行止めなのかというのが疑問でありました。想像力豊か な我々は道に爪でひっかいたような傷跡がたくさんあったのを見て、このあたり にはきっと熊が出没する。そして道のキズは熊が爪を研いだあとではないか、と。 コリャー大変だ。旭川市内にも熊が爪を研いだ跡がある。

美瑛は丘の上にある
なだらかな丘陵地帯。とうもろこし、じゃがいも、ひまわり そしてあのラベンダーが一面 に植えてある。空が、雲が直接大地と触れあう。 黄色や紫色のじゅうたんを一面 に敷き詰めたような美しい風景。大地の描く曲線 美がすばらしい。北海道ならではの風景です。ここでは学校までが絵になる。塔 のある美馬牛(びばうし)小学校もまわりの風景をひきたたせます。実にさまに なっている。もうこれ以上は僕の表現力では書けません。写真を見てください。

農作物ではあるが単なる農業ではない。観光農業とでも形容しましょうか。いわゆ る付加価値が違う。訪れた時期が若干早かったので残念ながらとれたてのとうもろ こしもじゃがいもも味わうことはできなかった。が、ぜるぶの丘で美瑛のじゃがい もに特製のバターをつけて食べるという瞬間が、ひと味違う満足感や幸福感を味わ わせてくれる。ようし、食べるぞという意気込みが沸いてくる。また行きたいと誰 しも思う。ここではディズニーランドのように顧客満足度がきわめて高いのであり ます。

夏といわず冬も素晴らしい
そして多くの芸術家を引きつける。フォトギャラリー も諸処にある。前田真三の拓真館はコースからはずれていて残念ながら割愛しまし たが、帰ってからどうも気になります。

予定ではこの日は楽なはずでありました。でもカムイコタンが計算外だったので走 行距離は約100km近くになりました。旭川の手前で元気印のおじいさんに出会 う。78才とか聞いた。稚内から日本縦断にチャレンジしているパーティの一員で した。このおじいさんからがんばれと逆に励まされたのでした。上には上がいるも んだ。

7月5日(美馬牛ー富良野ー芦別ー歌志内ー浦臼)同道:水上さん、西薮さん、 渋谷さん
富良野のラベンダーか、ラベンダーの富良野か。ラベンダーは草ではなく、木なん ですね。シソ科の。YDO。どういうわけか畑に草が生えていない。物理的に引き抜 くか、あるいは化学的に除草剤で処理するのか。でも本当に不思議ですよ。草が 一本もない。ここでは農園とはといいません。格好よくファームと言いましょう。富 良野のファーム冨田はここ一番の観光名所となっている。

ラベンダーはあの紫色がいい
かぐわしい匂いがいい。高貴な雰囲気を醸し出す。 優しさと癒しを感じる。ラベンダーのエキスは水蒸気蒸留によって取り出すことが できる。釜に切り取ったラベンダーの花を投入し、下からスチームを通すと香りの 成分がスチームと共に抽出されて出てくる。沸点の高い物質を低い温度で分解せず に取り出すことが出来る。これを冷却し整置すると水と油が分離する。この油が香 料になる。

富良野にはその他、チーズ工場や水上さんの泣きが入って行かなかった地ビール工 場などがある。この日も走行距離は100kmを超えるが、芦別への道は広い道幅 で素晴らしい。計画ではそのまま滝川まで行く予定でしたが、藪さんのショートカ ットの案内に誘われて、歌志内への道をとる。ここは昔炭坑の町である。悪い選択 だったのではないか。尻はいたくなるし、奥多摩の坂道のような山道だった。僕は ようやく浦臼にたどり着いた。

浦臼の鶴沼での温泉宿泊は尻の痛さも癒され、ビールが体にしみた。壁に貼ってあ るポスターをなにげなく見ると、この浦臼は幕末の風雲児、坂本龍馬と関係の深い ところであると。龍馬は土佐の出身だが今の高知には「坂本」姓を名乗る子孫はい ない。それは坂本家の一族がこの浦臼に移住したためであると。龍馬は北海道開拓 を夢見た。しかし、京都で刺客に討たれ、夢ははかなくついえる。この夢は甥の坂 本直寛によって実を結ぶ。

興味があったのでホームページを検索してみた
直寛は1896年(明治29年) に北海道開拓のため北見を視察する途中、浦臼の聖園農場に立ち寄った。ここには 同じ高知出身でキリスト教を信仰する武市安哉が、信仰と教育による理想農園を作ろ うと入植したものの、2年前に夢かなわず他界していた。直寛はこの農場を支援しよ うと決意。1898年、北見開拓を仲間に任せ、家族とともに聖園農場に身をゆだね た。竜馬一族と浦臼。双方の断ち難い結び付きの始まりだった。同年、直寛の兄で竜 馬の養子の坂本直が亡くなり、翌年、妻留と子直衛も浦臼に。直寛はその後、道内各 地で伝道活動に専念、1911年(同44年)、札幌で不帰の人となったとある。

ということは竜馬とおりょうさんとの間には子供はいなかったのか。

7月6日(浦臼ー札幌)同道:水上さん、西薮さん、渋谷さん
今日はいよいよ終着駅札幌だ。ススキノが、目に浮かぶ。昨日の山越えが影響して か尻がいたい。70km程だが、それより長く感じる。石狩川の橋を通る時はこわ かった。北海道にしてはめずらしく歩道がついていない。1車線しかないので自転 車のすぐ脇を車が通る。宗男さん、国後よりここを先に何とかしなはれ。危ないで っせ。

中原さんと落ち合いアサヒビール園で打ち上げだ
2時間飲み放題、食い放題で 3000円弱。アサヒビールの直営だから、質もいい。もし、これが近くにあった ら毎週行けるのになー。でも我ら自転車族には気をつけなはれや。田無にあった飲 み放題のチムニーはつぶれてしまった。ダメですよ、XXさん。ほどほどにしない と。ここで星川さんと再会する。お互いに感激です。この日は休みですが、特別 オープンの”ふみ”で大祝賀会となりました。

おわりに

いろいろなサポーターに恵まれ嬉しい限りです。”その1”を関係者に配信しまし たところ、自転車族の仲間の中島さんが特技を生かしてこんな立派なホームページ に仕上げてくれました。サポーターの皆さんにあらためて感謝いたします。

インターネットという便利なものができたお陰で。簡単に皆さんと双方向のコミュ ニケーションがとれるようになりました。気の早い向きは来年はどこへ行くのか、 と。あまり皆さんのいう通りになると、自分で行っているのか、皆さんに行かされ ているのか分からなくなりますからね。でもまたプロジェクトチームを組んで挑戦 したいと思っております。

塩狩峠のドラマ、78才のマラソンおじいさん。貴重な出会いがありました。僕たち はまだまだ若い。60才を間近に迎え、あらためて青春とは何かを問い直してみ たいと思います。そして、あの有名なサミュエル・ウルマンの詩をくちずさむ時、 不思議に希望と勇気が湧いて来るのです。

青春とは人生のある期間ではなく、
心の持ちかたを言う。
薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、
たくましい意思、ゆたかな想像力、炎える情熱をさす。
青春とは人生の深い泉の清新さをいう。

青春とは臆病さを退ける勇気、
安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。
ときには、20歳の成年より60歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うとき初めて老いる。
歳月は皮膚にしわを増すが、情熱を失えば心はしぼむ。
苦痛・恐怖・失望により気力は地に這い精神は芥にある。

60歳であろうと16歳であろうと人の胸には、
驚異に魅かれる心、おさな児のような未知への探求心、
人生への興味の歓喜がある。
君にも吾にも見えざる駅逓が心にある。
人から神から美・希望・よろこび・勇気・力の
霊感を受ける限り君は若い。

霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、
悲歎の氷にとざされるとき、
20歳であろうと人は老いる。
頭を高く上げ希望の波をとらえる限り、
80歳であろうと人は青春にして已む。

Samuel Ullman(1849-1924) "Youth" (作山宗久訳)

参考:
”塩狩峠”のビデオは立川の福音センターで手にいれることができました。
1973年の松竹映画。事故までに主人公が通過した信仰への珠玉のエピソードでつづる感動作です。

2002年盛夏  完


2002.8 (c)Shinzo Inohara


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このほか、2000年にも自転車で奥多摩の山登りを敢行しました。下記をチェック!
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