シンゾーさんからのおたより-その18

   
2005.5

 

やはり心配していたことが起こりました。JR西日本の福知山線の脱線死亡事故。かけがえのない命を一瞬にして奪われた犠牲者の方々の冥福を祈って合掌。
被害者が多く大型になればなるほど責任の所在が分らなくなり誰も咎められなくなる。一人が107人も殺めたら死刑だろうが、組織が絡むと果 たして誰がその責を負うのか。国家がからむと紛争とか戦争といい建前があれば逆に正当化される。

事故の要因にハインリッヒの法則というのがあります。ひとつの重大事故の裏には29の重大事故に直接つながる大きな要因があり、その裏には300もの小さな要因がある、というものです。
直接の原因は曲線部を高速で走行したということですが、単純にそれだけではないとハインリッヒは教えています。最初は石が置いてあったと言ってその場をごまかそうともしていた。ぼくがこの仕事でJRのおエライ方の言動を見たり聞いたりして来ましたが、JRの体質は昔の国鉄時代とさほど変わってはいないなという印象をもった。これで事故が起きなければいいが、と本当に心配していました。
お客よりもお上、組織の上部の言うことを優先し、犠牲者よりも組織を守ろうとする体質。昔は組合が強かった分だけ、安全走行についてはうるさかったが、民営化した今は安全よりも金儲けが優先するのか。三菱自工と共通 した隠蔽の構図も気になる。

最近大事故がよく起きる。H2ロケットの打ち上げ失敗、浜岡原発の配管破断事故、踏切での死亡事故。その前はもんじゅのナトリウム漏れ、東海村ではウランの臨界事故、などなど。
すべてが人災です。これは日本という国の構造的な問題と捉えるべきでしょうか。会社が儲からなくなったからと言って簡単にリストラをし、熟練者がいなくなって品質に対する厳しさがなくなり、チェック機能がきかなくなった。その上団塊の世代が今定年に差し掛かっており、技術の伝承をしようにも伝える相手がいないという深刻な状態になりつつある。ドイツのように定年を65歳まで延長するか、アメリカのように能力ある人は年齢に関係なく働ける社会にするかいろんな手はあるだろう。皆さん、のんびりノーテンキにテニスをやっとる場合ではござんせんよ。

一足先に梅雨入りした台湾。ティエンチ プーハオ(天気不好)。自分ではまだまだ、と思っているのですが、体がいうことをきかなくなりました。 膝の靭帯をいためた。歩くのもままならず、テニスも出来ず,欲求不満がつのります。幸いこちらでは医療費が安い。健康保険があるので。一回薬代込みで100元。これで風邪でも歯でも、鍼治療でも何でもこいだ。うそか本当か知らないが。そのうち台湾の保険も破綻するだろうから、早めにここで直して帰った方がいいよ、と日本人で歯科の女医さんが言う。

というわけで週末は温泉でリラックスすることにした。陽明山には温泉がいっぱい。台北からタクシーで300元弱。冬はかなり混んでいたが、暖かくなって人も減ってきた。中国語も中途半端では思わぬ 失敗もする。台北からタクシーに乗ったが、その地名は知らないという。
近くまで行ってもらって、別の地元のタクシーに乗り換えた。シンイールーへ行け、といったらなんとまた台北の方へ引き返すのだ。温泉地の行義路と世界一高いビルのある信義路の違いで、シンの発音が前者は2声で尻あがりに上がる、後者は4声で上から下へ下がる。読めたのがよくなかった。読めなければギョウギロと覚えていたはずだ。

台北駅から2kmほど北へ行ったところに保安宮(バオアングアン)という廟がある。清の時代に福建省南部からの移民が開墾を始めたころ、伝染病でたくさんの人がなくなった。そこで、彼らの故郷・福建省の慈斎宮から「保生大帝」を分霊して祭った。「保生大帝」は医学の神様で呉真人または大道公ともいい、実在した人物だという。979年に福建省に生まれ、17歳のとき、西王母から「済世妙方」の術を学んだという。明の時代になって、孝慈皇后の不治の病を治したので、皇帝から「保生大帝」の称号が与えられたと伝えられている。この保生大帝の祭りの保生大帝聖誕祭典が4月から5月にかけて盛大に行われた。雑技団のようにトンボを切る。龍が舞う。仮面 をかぶった行列。爆竹の音と激しいパフォーマンスで圧倒されそうだ。あとで調べたら最後は火の上を信者が歩く「過火」があるそうだ。

 

再見

2005年5月

 2005.5(c)Shinzo

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